カッパ君がころんでも!

ダウン症を持つ男子中学生との生活と、母のつぶやき

オルゴールNo.5

高校1年のバレンタインデー以来、
お互い19歳の時です。
3年ぶりに会うことになりました、、。

会うことが決まり、何より喜んだのは私以上に友人達でした。とりあえず、私に似合う範囲で男ウケのいい服を探してくれ、一緒に見に行きました。

薄い色のデニムのフレアースカートと淡いエメラルドグリーンの地にロゴの入った長袖のトップスを勧められ気に入ったので買いました。ベージュのGジャンに割りと似合いました。

あの頃はサイズが9号でも余裕でした。
いや、そんな事はいいです!

髪型も男の人は長い髪が好きな人が多い。
という勝手な思い込みを前提に、友人は
今のセミロングは似合ってるから、
その髪型がいいと言われたのですが、
媚びを売ってるみたいだなあと思って、
ショートヘアにして友人にびっくりされました。


看護学校の授業を終えて

私が、おとうに待ち合わせ場所として
お願いした、A市内の駅の南口に行きました。

わからないんだろうなぁと思っていたら
迷うこともなくすぐに、おとうだとわかりました。私の事も、すぐにわかったそうです。

革ジャンに白いTシャツ、ジーンズでした。

車で来てくれたのですが、その当時で20年前の白い「フェアレデイZ」に乗って来ました。

古い車だったので目立ちました。自分の生まれた年に発売されたZに乗りたくて購入したそうです。

当時は、同世代の男の子だと、たぶん人気のある車はトレノやレビン、シルビア、MR2、RX7が流行りでした。

私にとっては珍しくうつりました。

車体がやけにひくく、ツーシートだったのも印象に残ってます。



車の中で話がはじまるわけですが、私達は手紙では素直に自分の事を打ち明けられました。

それが、実際ふたりで出掛けるとなると、長い時間ふたりで過ごす事はなかったので、私は、何を話したらいいかわからない事。
相手が何を考えているかわからない不安がありました。
会話の沈黙も苦手ですが、私は口下手なので、
自分なりに場を繋ごうと気を使います。

江ノ島、鎌倉、城ヶ崎、油壺、観音崎と進み、
それぞれポイントに到着すると、
おとうは毎回「ついたよ~!!」と笑っています
でも、
運転中は話しかけても、
殆ど相手からは話しません。

到着して、確かに景色はキレイなので
凄いねー!
キレイだねー!といっても、おとうは
笑っている事が多く、
会話が続かなく苦戦しました。

城ヶ崎海岸は、段差の多い岩場が多いのですが、そこで、一ヵ所だけ手を引いてくれた事があったのですが、そのくらいで手を繋ぐ事もなく会話作りに頭を悩ませます。

結婚してしまえば、これがおとうなので
この時は、彼は普通通りだったのかもしれません。
私はひたすら余裕がなかったです。


沈黙なのに、布袋寅泰と吉川晃司のユニット
complexの1990が流れます。うぅ、、。
時折、浜田省吾も流れ出しました。あぁ、、。

この前、聴いたら、、
これは職場の先輩から借りたものを
更にダビングしたものでした。

まあ、でもこういう時って、
下手に気を使わず、話さなくてもいいんだったら、
これはこれで楽だなあと感じもしたのですが。

最後に、夜景のキレイな場所に連れていってくれたのですが、雨が降ってきました。

どこだったのかなぁ。今度、聞いてみよう。


途中でザーッと雨が降ってきたので、急いで車まで戻ります。

この時になんかしてくれた気がするんですが、
わ!嬉しい!!と思った気持ち以外は、
何をしてくれたのか覚えてません。

手も繋いでくれたわけじゃないのになぁ
会えて嬉しかったのは私の方だったんでしょうね

そして、門限ギリギリに到着

これが、もうすぐお別れすると頃になって、
やっと話しだすのでした。
何を話したかは覚えてないけど

実は、夕飯を食べる事を忘れて過ごしていて、
二人してその事を、夜景をみた後に気がつく
のですが、、

門限の都合上、食事はままならず、、。

でも、なんだか名残惜しい状態で
自宅まで送ってもらいました。

ドアを開けた時に、お互いに間がありました。
今日のお礼を伝えた後、
もうーーっ、私からは、こんな事を言いたくはなかったのですが
「ねぇ、また会えるの?」と、聴いたら

おとうは「今度は夜景のキレイなところを沢山見に行こう」というのでした。

結局は、私から聞くんじゃないか?ズルイと思いました。

そこで、車を見送ってお別れです。

私は、また会える期待半分、おとうからの連絡はないような気がしていました。

私からはもう誘わないと思いました。

しかし、おとうも高校2年の時に買った、オルゴールを、私に渡し忘れてしまうのでした。ハッとしたそうですが、また会えると思っていたそうです。

もし、いただいていたら恐らく結婚はしていませんでした。

さらに、約10年後、ある事がきっかけで再会し、ようやく私の手元にオルゴールが届きます。